開業届とは?税務署への提出方法と手順、必要なものを徹底解説
- 開業届とは
- 開業届の提出先と提出時期
- 開業届を提出するメリット・デメリット
- 開業届を提出するメリット
- 開業届を提出するデメリット
- 開業届の提出方法3種
- 開業届をオンラインで提出する方法
- オンラインでの提出に必要なもの
- オンラインで提出する際の事前準備
- 「e-tax」を使用した開業届の提出手順
- 開業届を税務署へ郵送する方法
- 税務署に直接提出・郵送する際に必要なもの
- 必要書類の入手方法と提出手順
- 開業届の書き方
- 開業届を提出する際の注意点:控えの保管を忘れずに
- 開業届の提出と合わせてしておきたい手続き
- 青色申告の申請
- 健康保険・年金の手続き
- 開業届の提出後に必要な手続き
- 開業届に関するよくある質問
- 開業届を出さないとどうなる?
- 開業届は遡って提出できる?
- 開業届を出した後、収入がなくても大丈夫?
- 副業の場合、開業届を出すと会社にバレる?
- 開業届提出前に購入したものは経費になる?
- まとめ
開業届とは、個人が新たに事業を始めたことを税務署に届け出する書類のことです。
個人事業主が事業を開始した後に必要な手続きのひとつですが、開業届を提出する方法が分からない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、開業届とは何か、提出方法や注意点などについて紹介します。開業を考えている方や開業届の出し方が分からない方は、ぜひ参考にしてください。
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開業届とは
開業届は、個人が新たに事業を始めたことを税務署に届け出するために用いられます。個人事業主はもちろん、フリーランスや副業の場合も事業を開始した際には、開業届を提出する必要があります。
開業届の提出先と提出時期
開業届は、納税地を管轄している税務署に提出します。個人で事業を行う場合は納税地が自宅になることが多いですが、別に事業所を設けて事業を行う場合は、事業所を納税地として届け出ることもできます。
提出する時期は、事業を始めた開業日から1ヵ月以内と定められています。提出の期限日が土曜・日曜・祝日になる場合は、翌日に提出すれば問題ありません。開業したら、できる限り早めに提出しておくと安心です。
開業届を提出するメリット・デメリット
開業届を提出するメリット
開業届を提出すると事業が公的に認められることになるため、屋号を冠した口座の開設が可能になるほか、事業に役立つ補助金・助成金への申請ができたり、小規模企業共済に加入できたりといった利点があります。
開業届を提出するデメリット
開業時の注意点として会社を辞めて新たな事業を開始する場合、失業保険を受け取れなくなることが挙げられます。
また、扶養者が加入している健康保険に「個人事業主は扶養の対象にはならない」と定められている場合、所得が130万円を超えなくても扶養対象から外れる可能性があります。
その他、開業届を出すメリット・デメリットはこちらの記事で詳しく解説しています。
開業届の提出方法3種
開業届の提出方法は、下記の3種類があります。
- オンラインで申請する
- 管轄の税務署へ郵送する
- 管轄の税務署窓口へ持参する
どの方法を選ぶかによって手続きが変わるため、あらかじめ確認して自分に合った方法で開業届を提出してください。
開業届をオンラインで提出する方法
インターネット上で開業届を提出する場合は、国税電子申告・納税システムの「e-tax」を利用します。オンラインなら税務署に出向かず手軽に開業届を提出できるため、利用してみるものよいでしょう。
オンラインでの提出に必要なもの
オンラインで提出する際に必要なものは、以下の通りです。e-taxを使うにあたって事前に準備しておくべきものがあるため、あらかじめ確認しておくと安心です。まだ用意していない場合は、開業届を出す前に入手するようにしてください。
- 【オンラインでの提出に必要なもの】
-
- マイナンバーカード
- マイナンバーカードの読み込むためのICカードリーダーもしくは対応スマートフォン
- パソコン
- インターネット環境
マイナンバーカードは、交付申請から受け取りまでには時間がかかるため、なるべく早めに手続きをしておくとよいでしょう。交付申請は、スマートフォンやパソコンでも可能です。
またオンラインでの申請には、パソコンからマイナンバーカードを読み取る必要があります。
ICカードリーダーは、家電量販店やインターネット通販などで手に入れられますが、必ずマイナンバーカードが使えるタイプを選ぶようにしてください。
オンラインで提出する際の事前準備
e-Taxを利用するにあたっては、利用者識別番号や電子証明書の取得などの事前準備が必要です。以下の手順を参考にしてください。
- 【事前準備の手順】
-
事前準備の手順は下記の流れになります。
「e-tax」を使用した開業届の提出手順
事前準備と必要なものが揃ったら、以下の手順で開業届を提出しましょう。
- 【e-taxで開業届を提出する手順】
-
- メニューから「作成」を選ぶ
- 「申告・申請等」から「新規作成」を選ぶ
- 「申請・届出」から「所得税」へ進む
- 「個人事業の開業・廃業等届出」から「個人事業の開業・廃業等届出書」を選ぶ
- 届出書に必要な事項を記入する
- 記入内容を確認したら「作成完了」を選ぶ
- ICカードリーダーをパソコンに繋ぎ、マイナンバーカードを挿入して開業届に電子証明書を付与する
- 送信可能一覧で送信ボタンを押す
開業届が正しく送信できたら、e-taxのメッセージボックスに申告データを受信した旨を知らせる通知が届くので、忘れずに確認してください。
開業届を税務署へ郵送する方法
オンラインでの提出が難しい場合は、税務署の窓口に直接提出するか、あるいは郵送する方法があります。自分に合った方法を選び、開業届を提出するようにしてください。ここからは、書類の入手方法や、税務署の窓口もしくは郵送での出し方について解説します。
税務署に直接提出・郵送する際に必要なもの
税務署に直接提出・郵送する際は、以下の必要書類を揃えます。
- 【税務署に提出・郵送提出する際に必要なもの(マイナンバーカード有)】
-
- マイナンバーカード
- 個人事業の開業・廃業等届出書
マイナンバーカードが用意できない方は、以下書類を準備してください。
- 【税務署に提出・郵送提出する際に必要なもの(マイナンバーカード無)】
-
- マイナンバーの確認が可能なもの(通知カードなど)
- 身分を証明できるもの(運転免許証・パスポートなど)
- 個人事業の開業・廃業等届出書
必要書類の入手方法と提出手順
開業届の必要書類は、税務署で受け取るか国税庁のWebサイトからダウンロードできます。
参考:国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
必要事項を記入後、管轄税務署の窓口に持参するか郵送で提出してください。なお、オンライン提出の場合も記入内容は基本的に同じです。
納税地 | 納税予定地の住所を記入 |
---|---|
個人番号 | マイナンバーカードに記載された番号を記入 |
届出の区分 | 「開業」を選択 |
所得の区分 | 山林や不動産に関する所得以外は事業所得を選択 |
開業・廃業日等 | 個人事業主として仕事を始めた日を記入 |
事業所等を新増設、移転、廃止した場合 | 記入の必要なし |
開業・廃業に伴う届出書の提出の有無 | 青色申告承認申請書も一緒に出す場合に選択 |
事業の概要 | 事業の内容を記入 |
給与等の支払いの状況 | 従業員の人数や給与の決め方を記入 |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無 | 事業方針に応じて記入 |
給与支払を開始する年月日 | 給与の支払いが始まる日付を記入 |
関与税理士 | 顧問税理士がいる場合は、氏名や連絡先を記入 |
必要事項を記入後、管轄税務署の窓口に持参するか郵送にて提出します。郵送の場合、税務署にきちんと届いたか確認するため簡易書留かレターパックで送るのがおすすめです。また、開業届の控えと返送用封筒・返送用切手も忘れずに同封して郵送してください。
開業届の書き方
開業届を郵送もしくは持参して手書きする場合の、開業届の書き方や記入例については、こちらの記事で詳しく解説しています。
開業届を提出する際の注意点:控えの保管を忘れずに
開業届は、原本だけでなく、控えも作成した上で提出時に税務署から受領印を押してもらってください。控えは、個人事業主であることの証明書になるため、大切に保管する必要があります。提出方法別の控えの受け取り方は、以下の通りです。
- 窓口に直接提出
原本とともに控えも提出し、受領印を押してもらってから受け取ります。 - 郵送で提出
原本とともに控えと返信用封筒を同封してください。後日、税務署が押印後の控えを返送してくれます。 - オンラインで提出
開業届の申告データとe-taxからの受信通知を印刷し、控えとして保管します。
開業届の提出と合わせてしておきたい手続き
開業届に併せて別の申請を行っておけば、二度手間を省けるようになります。どのような手続きをするべきかを確認し、スムーズな開業につなげましょう。
青色申告の申請
青色申告とは、事業上の取引を記帳した帳簿に基づいて確定申告を行うことを指し、最大65万円の控除が受けられます。青色申告が必要な人の特徴は、以下の通りです。
- 税理士に毎月の記帳業務を依頼する人、または自ら簿記の原則に従って記帳ができる人:青色申告を選ぶことによって最大65万円の控除が受けられるため、節税対策になります。
- 事業を手伝っている家族へ給与を支払っている人:給与を経費として計上できるようになります。
この他にも青色申告によって受けられる節税メリットはさまざまあるため、必要な場合には申請を検討してください。
なお、青色申請の必要書類は「所得税の青色申告承認申請書」です。納税地を管轄する税務署の窓口に持参するか郵送で申請できます。
健康保険・年金の手続き
会社を辞めて個人事業主になったら、国民健康保険と年金の手続きが必要です。それぞれの手続き方法については、以下の通りです。
- 【国民健康保険の手続き】
- 国民健康保険異動届・健康保険資格喪失証明書(退職証明書や離職票で代用可能)・マイナンバー・本人確認書を用意し、各自治体の国民健康保険窓口に提出します。会社を退職した翌日から2週間以内に手続きをしてください。
- 【年金の手続き】
- 年金手帳・本人確認書・印鑑・退職した勤務先と退職年月日が分かる書類(離職票・退職証明書など)を用意し、各自治体の年金担当窓口に提出します。退職日から2週間以内に手続きをしてください。
開業届の提出後に必要な手続き
開業届を提出した後は、事業に関する記帳作業を行い、確定申告を行う必要があります。確定申告が必要な人の条件は、以下の通りです。
- 個人事業主やフリーランス: 計算の結果、所得税が発生する場合
- 副業を行っている給与所得者:本業以外の副業で年間20万円以上の収入(副業が事業など給与所得以外であれば所得が20万円以上)がある場合
など
ただし、上記以外でも確定申告をしておかないと融資を受けられなくなるなどの不都合が生じることがありますので、確定申告の義務がない場合でも確定申告は必ず行うようにしましょう。
なお、開業届提出後に住所変更があった場合は「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を税務署へ提出してください。
開業届に関するよくある質問
開業届の提出にあたっては、さまざまな面で疑問に感じることもあるのではないでしょうか。ここからは、よくある質問とその回答を紹介しますので、疑問を解消するために役立ててみてください。
開業届を出さないとどうなる?
開業届の提出は、義務として定められています。しかし、開業届を出さないことに対する罰則はありません。また、開業届を出さなかったとしても、税務署から催促されることはほとんどないと言われています。
しかし、罰則や催促がなかったとしても、開業届を出さなくてよい理由にはならないため注意してください。また、開業届を出さないと屋号を冠した銀行口座の作成ができないなどの不利益を被ることになります。滞りなく事業を行うためにも、開業届は出した方がよいでしょう。
開業届は遡って提出できる?
開業届は、遡って提出できます。通常は事業を始めた日から1ヶ月以内に提出すべきと定められていますが、たとえ1ヶ月以上経過したとしても開業した日付に遡って提出できるのが一般的です。もし1ヶ月を過ぎてしまったとしても問題ないため、なるべく早めに提出するようにしてください。
ただし、開業届の提出日は遡れません。税務署に開業届を申請した日が提出日として記録されることになります。
開業届を出した後、収入がなくても大丈夫?
開業届を提出した後に収入なしの状態になったとしても、問題はありません。開業届を提出する条件には、所得の額や収入の有無は含まれていないためです。たとえ収入なしの状態であったとしても、開業届を出しておけば金融機関から融資を受けやすくなったり、助成金・補助金を受けられたりといったメリットがあります。
副業の場合、開業届を出すと会社にバレる?
開業届を出しただけで、副業が会社にバレることはありません。ただし、個人事業主としての利益が上がると本業のみの場合よりも住民税が高くなるため、会社に副業が知られる可能性があります。
開業届提出前に購入したものは経費になる?
開業届提出前に購入したものでも事業のための支出であれば、経費計上が可能です。具体的には、開業のため勉強会への参加費用や打ち合わせ費用、パソコン購入費用、通信費などが挙げられます。
まとめ
開業する場合、開業届の提出は必須であるほか、提出しておくことで節税できたり、融資を受けやすくなったりといった利点があります。青色申告や社会保険、年金に関する手続きもまとめて行えば、後で面倒な思いをせずに済むでしょう。スムーズに開業できるよう、基本的な知識を身につけたうえで手続きを行ってみてください。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。