株式会社設立にかかる費用の目安|設立のメリットも徹底解説
- 株式会社設立の手続きにかかる費用
- 法定費用
- 印鑑・印鑑証明、謄本の費用
- 資本金
- 【資本金別】株式会社設立にかかる費用
- 資本金500万円の場合
- 資本金1,000万円の場合
- 資本金3,000万円の場合
- 株式会社設立時にかかるその他の費用
- 株式会社設立にかかるコストを削減するには
- 株式会社設立のメリット
- 信頼を得られる
- 節税になる
- 決算月を自由に設定できる
- 株式会社設立のデメリット
- 社会保険に加入する必要がある
- 赤字でも税金が課せられる
- 解散するときにも費用がかかる
- 株式会社設立の手順
- 1.会社概要の決定
- 2.定款作成
- 3.資本金の払い込み
- 4.登記申請書類作成
- 5.登記登録申請
- 有限会社と株式会社の設立費用の違い
- 合同会社と株式会社の設立費用の違い
- 株式会社設立に関するよくある質問
- 株式会社設立は自分ひとりでもできる?
- 発起人とはどのような人のこと?
- まとめ
株式会社を設立するにあたって、どれくらいの費用がかかるかはあらかじめ知っておきたいところです。しかし、設立に必要な手続きにかかる費用や、実際にどのくらいの額になるのかシミュレーションする機会は、あまり多くないでしょう。そこでこの記事では、株式会社設立にかかる最低金額の目安や、コストの削減方法を解説します。株式会社設立のメリット・デメリットや手順なども紹介しますので、起業を考えている方はぜひ参考にしてください。
株式会社設立の手続きにかかる費用
株式会社の設立時には、大きく分けて「法定費用」「印鑑・印鑑証明、謄本の費用」「資本金」の3つの費用がかかります。
法定費用は定款認証の際に紙の定款を作るか、PDFなどの電子定款を作るかで変わるため、株式会社設立費用の合計額も定款の種類によって左右されます。設立費用の最低限の目安は、紙の定款の場合約22万~25万円程度、電子定款の場合約18万~21万円程度です。
この金額の内訳となる3つの費用について、詳しく見ていきます。
法定費用
法定費用は、法的に必ず発生する費用のことで、定款認証にかかる費用と、登記の申請にかかる税金が含まれます。
定款認証には、紙・電子にかかわらず、認証手数料と謄本の交付手数料2,000円程度が必要です。認証手数料は資本金の額に応じて変動します。資本金100万円未満の場合は3万円、100万~300万円未満の場合は4万円、その他は5万円です。
紙の定款には、加えて4万円の印紙代がかかります。合計すると紙の定款は約9万2,000円、電子定款は約5万2,000円の費用が手続きにかかる目安です。
登記の申請時には、登録免許税が発生します。登録免許税の額は「資本金額×0.7%」で計算できますが、最低限度額が15万円のため、必ず15万円は用意しなければなりません。定款と登記にかかる費用を合計すると、設立費用の実費である法定費用は約、18万~25万円程度になります。
印鑑・印鑑証明、謄本の費用
株式会社設立には、印鑑の作成と印鑑証明・謄本の発行にかかる費用も必要です。
設立時に作る印鑑には、会社の意思決定の証明となる「実印」、取引口座の開設・管理に必要な「銀行印」、源泉徴収票などに使う「角印」の3種があります。3本セットで販売しているオンラインショップも多く、安ければ1万円以内で入手可能です。起業時の記念として職人に作ってもらう場合は、10万円はかかると見積もりましょう。
印鑑証明の発行にかかる費用は自治体によって異なりますが、1通300円程度です。設立時に発起人と取締役員全員分の個人証明を、公証役場や法務局に提出します。
会社の重要事項が書かれた登記謄本を取得するには、1通500~600円程度かかります。法務局への請求方法には窓口・郵送・オンラインの3種があり、オンラインで申請して窓口で受け取る方法が480円と最も安いです。
資本金
資本金は、株主が会社に出資した運転資金の基礎となるお金です。法的には、資本金が1円以上あれば会社を設立できます。とはいえ、資本金は会社の信用を証明するものであるため、少なすぎると銀行で融資を受ける際や会社名義の口座開設の際などに不利になることがあります。
事業によっては、資本金の最低額の条件が設定されていることもあります。例えば有料職業紹介事業を行う会社を設立するためには、500万円以上の資本金が必要です。
資本金額は事業規模や内容によってさまざまですが、目安としては運転資金の3カ月~半年分を用意するのが一般的です。なお、資本金が1,000万円以上だと課税事業者に認定され、初年度から消費税の納付が義務付けられます。節税の観点も、資本金額を考える際の軸にしてみてください。
【資本金別】株式会社設立にかかる費用
ここまで株式会社にかかる費用について解説しましたが、具体的な金額をイメージすることは難しいでしょう。
そこで、資本金500万、1,000万、3,000万円の場合の株式会社設立にかかる費用を想定してみました。想定するにあたり、定款は電子定款で作成し、印鑑代に1万円、印鑑証明と謄本の発行にそれぞれ3通分の料金がかかったこととします。
資本金500万円の場合
資本金500万円の株式会社設立にかかる費用は、以下のとおりです。
定款の認証手数料・謄本手数料 | 5万2,000円 |
---|---|
登記の登録免許税 | 15万円(最低額) |
印鑑代・印鑑証明代 | 1万900円=1万円+300円×3通 |
謄本代 | 1,500円=500円×3通 |
合計で、21万4,400円です。
資本金1,000万円の場合
資本金1,000万円の株式会社設立にかかる費用は、以下のとおりです。
定款の認証手数料・謄本手数料 | 5万2,000円 |
---|---|
登記の登録免許税 | 15万円(最低額) |
印鑑代・印鑑証明代 | 1万900円=1万円+300円×3通 |
謄本代 | 1,500円=500円×3通 |
合計で、21万4,400円です。資本金500万円と1,000万円の場合は、どちらも登録免許税の最低額15万円が適用されるため、同額になります。
資本金3,000万円の場合
資本金3,000万円の株式会社設立にかかる費用は、以下のとおりです。
定款の認証手数料・謄本手数料 | 5万2,000円 |
---|---|
登記の登録免許税 | 21万円(3,000万円×0.7%) |
印鑑代・印鑑証明代 | 1万900円=1万円+300円×3通 |
謄本代 | 1,500円=500円×3通 |
合計で、27万4,400円です。
株式会社設立時にかかるその他の費用
株式会社設立時には、手続きにかかる費用以外に、専門家への依頼料や事務所の賃貸料、交通費などの諸経費が必要です。中でも、専門家に手続き代行を依頼する場合の費用を知りたい方が多いかと思いますので、ここでは専門家に代行手続きを依頼する場合の相場を紹介します。
会社設立時に頼れる主な専門家には、司法書士・行政書士・税理士がいます。それぞれ依頼できる分野や依頼料が異なりますので、依頼したい内容や予算に応じてどの専門家を選ぶか決めましょう。
依頼できること | 依頼料相場 | |
---|---|---|
司法書士 |
|
約5万~ |
行政書士 |
|
約5万円~ |
税理士 |
|
約3万~5万円 |
相場を見ると高額に感じるかもしれませんが、プロに任せた方が余計な出費がなく、結果的にコストが抑えられる場合もあります。
株式会社設立にかかるコストを削減するには
株式会社設立にかかるコストを削減するには、次のような方法があります。
- 電子定款で認証する
- 資本金を1,000万円未満にする
- 特定創業支援事業を活用する
定款の認証時に電子定款を選ぶメリットは、4万円の印紙代がかからない点です。ただし、電子定款を作成するためにはソフトやICカードリーダーが必要なため、紙の定款よりも結果的に高くなり得ることに注意が必要です。とはいえ、必要機材が既にそろっている方や、設立後も機材を活用できる方にはおすすめの方法です。
設立時の資本金が1,000万円未満の場合、原則として2年間は免税事業者となり、消費税の支払い義務が発生しません。さらに、登録免許税も最低額の15万円に抑えられます。
産業競争力強化法により、登記の際に自治体からの支援が受けられる場合があります。この特定創業支援事業制度を利用すると、登録免許税が通常の半額になるのが魅力です。しかし、制度に対応していない自治体もあるため、会社所在地の市区町村に確認してください。
株式会社設立のメリット
個人事業や合同会社など、事業を展開する手段は他にもありますが、株式会社を設立するからこそ得られるメリットがあります。株式会社設立の大きなメリットは、以下の3つです。
- 信頼を得られる
- 節税になる
- 決算月を自由に設定できる
ここでは、それぞれの項目について見ていきましょう。
信頼を得られる
株式会社は、現在で最もメジャーであり、歴史が長い会社形態です。株式会社はさまざまな法律を守り、資本金や役員などの基本情報を明確化した上でしか設立できません。株式の発行により資金調達が容易なこともあり、個人事業や他の会社形態と比べて社会的な信頼が得られやすいのです。
信用度が高ければ、取引で有利になるだけでなく、金融機関からの融資・資金調達もしやすくなります。
節税になる
株式会社をはじめとする法人にかかる税は、所得が増えるほど税が高くなる累進課税でなく、原則として一定の税率が決まっているのが特徴です。
個人事業主に課せられる所得税率が最高45%であるのに対し、株式会社の法人税率は最高でも約23%と、かなりの差があります。例えば課税所得が800万円だった場合、個人事業主には段階的ではありますが最大で23%の税率、法人(資本金1億円以下)には15%の税率が課せられます。
その他の税を加算しても、株式会社の税率は低くなります。個人事業の年間所得が一定額を越えたら、法人化した方が節税になるといわれるのは、これが理由です。
決算月を自由に設定できる
株式会社は、決算月を自由に選べる点でも個人事業より有利になることがあります。個人事業の決算月は12月に固定されており、どんなに忙しくても3月15日の確定申告期限までに確定申告しなければなりません。
一方で、株式会社は、業種や節税対策などを考慮して決算月を選べます。つまり、利益や売上の見通しが立ちにくい繁忙期を避けたり、資金的な余裕がある月に設定して納税に備えたりすることも可能です。
決算期は設立後も変更できますので、会社にとって都合のよい月を柔軟に選びましょう。
株式会社設立のデメリット
株式会社の設立には、デメリットも伴います。懸念点は、以下の3つです。
- 社会保険に加入する必要がある
- 赤字でも税金が課せられる
- 解散するときにも費用がかかる
社会保険に加入する必要がある
株式会社を設立すると、健康保険や厚生年金といった社会保険に加入する必要があります。一般的に、法人の社会保険料は、個人が加入する国民健康保険や国民年金よりも高額になることが多いです。
社会保険料は会社と従業員で半分ずつ支払うため、従業員が多い企業などは経営者側の負担が大きくなります。将来的な年金受給額や福利厚生を考えれば加入のメリットは大きいですが、法人化すれば必ずコスト削減できるわけではないことを念頭に置きましょう。
社会保険料の額は、基本給やその他の手当をベースに、等級分けした標準報酬月額が高いほど上がります。そのため、役員報酬を無駄に高く設定しないよう、意識することで節約が可能です。
赤字でも税金が課せられる
株式会社には、赤字・黒字にかかわらず課せられる税金があります。利益が出ていなくても納付しなければならないのは、法人住民税の均等割です。年間の均等割額は会社の所在地や資本金、従業員数などによって異なり、東京都では最低でも7万円かかります。
法人住民税均等割を最小限にしたい方は、資本金を1,000万円以下に設定することをおすすめします。
解散するときにも費用がかかる
株式会社は設立や運営だけでなく、解散する際にも費用がかかります。資金や後継者などの問題で事業活動が停止した場合、税負担や役員登記の手間をなくすために会社を解散させることが一般的です。
しかし、株主総会で解散が決定し、会社清算して完全消滅するまでの間に、登記申請や公告に7万5,000円程度のコストがかかります。専門家に手続きを代行してもらう場合、さらに数万~数十万円の費用が必要です。
株式会社設立の手順
株式会社設立までに行う作業は以下の通りです。
- 会社概要の決定
- 定款作成
- 資本金の払い込み
- 登記申請書類作成
- 登記登録申請
順を追って紹介します。
1.会社概要の決定
会社設立にあたって、あらかじめ会社概要を決めなければなりません。必要事項(一部)は、次のとおりです。
- 商号
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金額
- 発起人
- 発行可能株式数
- 設立時発行株式数
- 事業年度・決算期
- 取締役・代表取締役などの役員
2.定款作成
会社概要に定めた事項や会社の基本ルールを定款にまとめた後、公証役場で証明を受けます。
3.資本金の払い込み
発起人か設立時代取締役のうち1人またはそれぞれの発起人が、銀行口座に出資金(=資本金)を払い込みます。資本金の払い込みは、定款が認証される前でも可能です。
4.登記申請書類作成
商業登記法に従って登記申請書を作成します。作成は、司法書士に任せるのが一般的です。
5.登記登録申請
作成した登記申請書を必要書類とともに法務局に提出します。原則、登記申請書の提出日が会社の設立日となります。
有限会社と株式会社の設立費用の違い
ここでは、株式会社と有限会社の設立費用の違いを説明します。有限会社は、かつて最低資本金額300万円で設立できた会社形態です。現在は新規で設立できないため、有限会社として事業を立ち上げるのであれば、すでに設立されている有限会社(特例有限会社)の出資を買い取ることになります。
新会社法の施行以前は株式会社の設立に必要な資本金が1,000万円以上と高額であったため、最低資本金300万円以上で設立できる有限会社は資本金を抑えて起業したい人に人気の会社形態でした。有限会社の設立には、資本金を除いて15万円程度かかったと言います。
合同会社と株式会社の設立費用の違い
それでは、合同会社と株式会社では設立費用にどのような違いがあるのでしょうか?2006年に廃止された有限会社に代わって登場したのが、合同会社です。比較的新しい形態のため信用度はやや低いものの、株式会社に比べて設立コストが安く、経営の自由度が高いというメリットがあります。
合同会社設立にかかる費用は、紙の定款なら10万~11万円、電子定款なら6万~7万円程度です。
株式会社との大きな違いは、定款の認証手数料5万円がかからないことと、登録免許税の最低額が6万円であることです。一方で、資本金は、株式会社と同じく1円以上用意すれば設立できます。
株式会社設立に関するよくある質問
続いて、株式会社設立に関するよくある質問と回答を紹介します。
株式会社設立は自分ひとりでもできる?
2006年に新会社法が施行されて以降、株式会社は1人でも設立可能です。前述したとおり、資本金1円から設立できるため、資金的なハードルもそれほど高くありません。近年は、事業の拡大や節税効果を狙って個人事業主が自分で法人化するケースも増えています。
ただし、1人での設立は、リスクも大きいことに注意してください。例えば株式会社を設立すると、社会保険への加入が義務付けられ、保険料の負担が大きくなります。また、あらゆる事務を1人でこなさなければいけないため、設立手続きや設立後の業務を外注することが多くなり、コストがかさみやすくなります。
発起人とはどのような人のこと?
発起人とは、会社設立の際に資本金の出資や、定款作成などの手続きを行う人のことです。取締役の選任など、会社の重要事項の決定も行います。基本的に、会社設立までの行為について責任を負う立場であるため、役割を果たせずに会社に損害を与えた場合、賠償を支払うこともあります。
発起人には、15歳以上であれば特に資格の制限がなく誰でもなれます。人数にも決まりはなく、複数人で担当して責任を分散させることも可能です。
発起人は会社設立後、資本金の出資額に応じて株式が発行されて株主となり、会社の意思決定に関わるようになります。1人で設立する場合、取締役と株主を兼任するケースも珍しくありません。
まとめ
株式会社を設立するには、「法定費用」「印鑑・印鑑証明、謄本の費用」「資本金」という3つの費用がかかることを紹介しました。設立費用は決して安くありませんが、電子定款を認証したり、資本金額を下げたりすることで、コスト削減が可能です。
手続きの手間を減らしたい場合は、専門家に代行を依頼するための費用も用意しなければなりません。しかし、現在は資本金1円からで会社設立でき、個人での法人化のハードルは下がっています。信用度の高さや節税効果といったメリットをフルに活用できるのであれば、費用をかけてでも株式会社を設立する価値はあるでしょう。
- 記事監修
-
- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。