個人事業主の税金はいくら?年収別シミュレーションを紹介
個人事業主は多くの場合、確定申告を行って税金を納めなければなりません。税金の未納や不正申告は重大なペナルティを課せられる可能性があるため注意が必要です。
個人事業主になることを検討している方や個人事業主に興味がある方のなかには、個人事業主が納めるべき税金について気になっているという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、個人事業主が納めるべき税金やその計算方法、年収別の税金額について詳しく解説します。
個人事業主の税金は確定申告で決まる
個人事業主が納めるべき税金、特に所得税の金額は確定申告で決定します。
所得税は個人の所得に対して課せられる税金のことであり、一定額以上の収入を得ている個人事業主は必ず納めなくてはなりません。
所得税の金額は、1月1日~12月31日までの1年間の所得から経費や各種控除を差し引いて算出されます。正確な金額を算出するためには、所得に加え、経費を細かく申告する必要があるため、日頃からの管理が重要です。
個人事業主の方で、所得から経費を差し引いた金額が48万円以下の場合は、確定申告をする義務はありません。しかし、確定申告は節税につながる可能性があるため、たとえ所得が48万円を下回っている場合でも申告するメリットはあります。
また、確定申告の控えは収入証明書の代わりとして使用できます。行政や銀行の手続きでも役立つため、所得額にかかわらず、個人事業主であれば確定申告することをおすすめします。
個人事業主が納める税金は全部で4種類
個人事業主が納める税金は主に所得税、住民税、消費税、個人事業税の4種類です。
ここでは、それぞれの概要について解説します。
所得税
所得税は、1年間の所得に対して課税される税金です。
職業に関係なく、1年間で1,000円以上の課税所得がある方は納める義務があります。また、2037年までは所得税に加え、復興特別所得税の納付も必要です。
所得税は累進課税となっており、所得が増えるごとに税率も増加する特徴があります。
個人事業主の場合は法人に比べて必要経費の対象となる項目の幅が狭いため、収入次第では半分以上が所得税として徴収されることも想定されます。
住民税
住民税とは、自宅がある住所地の都道府県・市区町村に納める税金のことであり、「道府県民税(東京都は都民税)」と「市町村民税(東京都23区は特別区民税)」の総称です。
毎年1月1日時点で住民票がある市区町村に納めるものであり、均等割と所得割の2種類の税金で構成されています。
均等割は所得額に関係なく、すべての人に対して発生するものです。市区町村によって金額は異なりますが、多くの場合市町村民税3,500円と道府県民税1,500円を合算した5,000円が課せられます。
所得割は所得に対して発生するものであり、一律10%(都道府県民税4%+市町村民税6%)と定められています。
消費税
消費税とは、商品の販売やサービスの提供に伴う取引に対して課せられる税金です。消費税は国に納める「国税」と都道府県・市区町村に納める「地方税」の2種類に分けられます。
消費税は消費者が負担し、事業者が納付するのが基本です。
個人事業主においては、前々年度もしくは前年度の上半期の課税売上が1,000万円を超える場合に消費税の納税義務が発生します。つまり、課税売上が1,000万円を下回る場合は、消費税の納税義務が免除されるということになります。
個人事業税
個人事業税は、事業を経営する個人に課せられる税金であり、各都道府県指定の業種に当てはまる個人事業主が課税対象です。
例として、個人事業税の対象に含まれない業種は以下の通りです。
- 芸能人
- 漫画家
- 音楽家
- システムエンジニア
- プログラマー
- ライター など
たとえ個人事業税の対象に含まれていない業種であっても、開業届を提出する際の「職業の分類」次第では、課税対象になる可能性があるため、注意が必要です。
事業の総収入金額から必要経費(事業主控除:年290万円)を差し引いて算出されます。なお、個人事業税を計算する際は、青色申告の特別控除は適用されません。
各都道府県によって各業種の適用税率が異なるため、事前確認することが大切です。
個人事業主が納める税金の計算方法
ここでは、個人事業主が納める税金の計算方法を紹介します。
所得税の計算方法
個人事業主の所得税は以下の3ステップで計算できます。
- 事業所得:事業収入-必要経費-青色申告特別控除
- 課税所得:事業所得-所得控除
- 所得税:課税所得×所得税率-控除額-税額控除
青色申告特別控除とは、青色申告制度を利用している方に限定されたものであり、所得控除とは別に利用可能です。通常の申告であれば最大で55万円の控除ですが、e-Taxによる電子申告であれば10万円の特別控除をプラスして、最大で65万円の控除を受けられます。
所得税は、原則2月16日~3月15日の期間に申告・納付する必要があり、以下の方法を利用できます。
- 指定の金融機関の預金口座から振替
- 電子納税
- クレジットカード決済
- コンビニエンスストアでQRコード決済
- 税務署・金融機関にて現金納付
住民税の計算方法
住民税は、「所得割」と「均等割」で構成されており、個人事業主は現在住んでいる場所を管轄する自治体に納税しなければなりません。
住民税の計算方法は以下の通りです。
- 前年度の所得×10%(所得割)+5,000円(均等割)
「所得割」は一律10%で設定されており、前年度の課税所得で金額が決まります。一方、均等割はすべての事業者に対して課せられるものであり、5,000円前後になるケースがほとんどです。
均等割は自治体によって金額に違いがあるため、計算する際は現在住んでいる住所を管轄する自治体に確認することが大切です。
消費税の計算方法
課税事業者に課せられる消費税の計算方法は「原則課税方式」と「簡易課税方式」の2種類があります。
それぞれの計算方法は以下の通りです。
- 原則課税方式:売上に関わる消費税額-費用に関わる消費税額
- 簡易課税方式:売上に関わる消費税額-(売上に関わる消費税額×みなし仕入率)
みなし仕入率は事業区分によって40%〜90%の間で変動します。みなし仕入率の詳しい内容は、国税庁のホームページを確認してください。
なお、簡易課税方式を適用できるのは前々年度の売上高が5,000万円以下、適用する前日(開業年だけはその年の12月31日)までに税務署に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した個人事業主に限られるため、注意が必要です。
個人事業税の計算方法
個人事業税は個人的に事業を営んでいる方に課せられる地方税ですが、すべての個人事業主が該当するわけではありません。
個人事業税の対象となるのは、地方税法で定められた業種に該当する場合のみであり、業種によっては納税の対象外になることもあります。
個人事業税の計算方法は以下の通りです。
- (総収入額-必要経費-事業主控除)×税率
個人事業主は、年290万円の事業主控除が利用できます。青色申告特別控除を利用する前の事業所得が290万円以下の場合は、対象業種であっても個人事業税を納める必要はありません。
個人事業主の税金はいくら?年収別シミュレーション
ここでは、以下の条件を適用して個人事業主の納税額を年収別に紹介します。
- 30代単身者
- 青色申告特別控除65万円を利用
- 必要経費:事業収入の1/4
- 所得控除:基礎控除のみ
- 個人事業税:5%
- 住民税:所得割10%、均等割5,000円
200万円
年収200万円の個人事業主の税金額は以下の通りです。
①所得税:18,500円
- 2,000,000円(事業収入)-500,000円(必要経費)ー650,000円(青色申告特別控除)=850,000円(事業所得)
- 850,000円(事業所得)-480,000円(所得控除)=370,000円(課税所得)
- 370,000円(課税所得)×5%(所得税率)-0円(控除額)=18,500円(所得税)
②住民税:90,000円
- 850,000円(事業所得)-430,000円(所得控除)=420,000円(課税所得)
- 42,000円(所得割)+5,000円(均等割)=47,000円(住民税)
③個人事業税:0円(青色申告特別控除を利用する前の所得が290万円以下のため)
500万円
年収500万円の個人事業主の税金額は以下の通りです。
①所得税:164,500円
- 5,000,000円(事業収入)-1,250,000円(必要経費)ー650,000円(青色申告特別控除)=3,100,000円(事業所得)
- 3,100,000円(事業所得)-480,000円(所得控除)=2,620,000円(課税所得)
- 2,620,000円(課税所得)×10%(所得税率)-97,500円(控除額)=164,500円(所得税)
②住民税:315,000円
- 3,100,000円(事業所得)-430,000円(所得控除)=2,670,000円(課税所得)
- 267,000円(所得割)+5,000円(均等割)=272,000円(住民税)
③個人事業税:42,500円
- 5,000,000万円(事業収入)-1,250,000円(必要経費)-2,900,000円(事業主控除)=850,000円
- 850,000円×5%(税率)=42,500円(個人事業税)
1,000万円
年収1,000万円の個人事業主の税金額は以下の通りです。
①所得税:846,500円
- 10,000,000円(事業収入)-2,500,000円(必要経費)ー650,000円(青色申告特別控除)=6,850,000円(事業所得)
- 6,850,000円(事業所得)-480,000円(所得控除)=6,370,000円(課税所得)
- 6,370,000円(課税所得)×20%(所得税率)-427,500円(控除額)=846,500円(所得税)
②住民税:690,000円
- 6,850,000円(事業所得)-430,000円(所得控除)=6,420,000円(課税所得)
- 642,000円(所得割)+5,000円(均等割)=647,000円(住民税)
③個人事業税:230,000円
- 10,000,000万円(事業収入)-2,500,000円(必要経費)-2,900,000円(事業主控除)=4,600,000円
- 4,600,000円×5%(税率)=230,000円(個人事業税)
まとめ
この記事では、個人事業主が納めるべき税金やその計算方法、年収別の税金額について解説しました。
個人事業主になった場合、自身で確定申告を行い、納税額を計算して納める必要があります。
収入によっては確定申告をする必要がない場合もありますが、個人事業主であれば確定申告をしておいた方が節税できる可能性もあるため、欠かさず行うようにしましょう。
各種税金の計算は自身の収入や業種などによって変動します。場合によっては計算が複雑になることもあるため、自身で計算するのが難しいという方は、専門家に頼ってみても良いかもしれません。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。